世界のミュージックシーンで活躍するパリ在住の音楽家、半野喜弘氏にインタビュー!
テクノをバックグランドに持ち、映画音楽、オーケストラとの共演など世界のミュージックシーンで活躍するパリ在住の音楽家、半野喜弘がニューソウル期が持つ「熱気」を独自に解釈したアルバム「PEOPLE」を2年降りにRADIQ名義でリリース。
盟友田中フミヤと共に主宰するレーベルop.disc からは、国内外の最先端で活躍する日本人クリエーターが集結した3rdコンピレーションアルバム「Hub opus tokyo」をリリース。
8/14には、レーベルショーケース「op.disc showcase hub@LIQUIDROOM」も控えている半野喜弘に帰国直後、ロングインタビューを行った。
INTERVIEW & TEXT:Nobuhiro Kasai(Versoix/ROZALIA SCARTISSUE/scartissue)
協力:op.disc suzy inc.
opdisc.com
MySpace.com/opdisctokyo
http://www.yoshihirohanno.com/
RADIQ 'PEOPLE' Release Tour
8/14(金)'op.disc showcase hub' @ Liquidroom 東京
8/15(土)Clapper 大阪
8/21(金)Mago 名古屋
8/28(金)KIeth Flack 福岡
Q) RADIQ名義でリリースされた「PEOPLE」、その制作にあたっての経緯を教えていただけますか?
RADIQ名義で最初からやりたかったことは、僕の中にあるいろんな言語の問題、人種の問題を音楽として表現するってことでした。例えば「ボーダー=国境」がいろんなものにある。人種にあって国にあって音楽にもあって、でも僕たちはあまりずっと意識せずに生きてきたと思ったんです。それは、日本人って「日本と外国」といった大きな区切りを持っているんです。その考え方を取り払いたかったのが「PEOPLE」の制作当初にありました。アフリカ人のラッパーを入れてフランスの白人がやっているテクノレーベルで全然違う音楽をリリースしてみたり、繋がらないものを繋げることで何か新しい人と人の関係や音と音の関係が出来ないかって。でも実際にそれをやってみたら、かなり表層的なことだったんですね。自分の中にある文化から得たものや自分の中の国境を崩すということを、ここ3年ずっと考えていたんです。でもなかなか答えが出なかった。その間に12インチの制作をするなど、ジャンルの幅をフロアーよりにした中で何が出来るか?といった実験的なこともやっていました。そしてやっと自分の中で辿りついた結論が今のスタイルで、やっとアルバムをつくることになったんですよ。
Q)50〜60年代前後のニューソウル期を独自で解釈されたアルバムということですが?
ニューソウル期のあの時代が持つ「熱気」が好きなんですね。人が何かを突破しようとするエネルギーが凄くあった時代。アメリカでは公民権運動があってパリでは5月革命があった。そういう「熱気」をどうやったら今の自分の音楽の中に盛り込めるのだろう?っていうのが今回のアルバムの一番の目的だったんです。たまたま僕は、1968年生まれ。マーティン・ルーサー・キング牧師が亡くなった年です。子供の時にまだあまりわからずに買ったレコードがスティービー・ワンダーのアルバムだったんです。そのレコードの中にスーツを着た短髪の黒人のポートレートが入っていたんです。スティービー・ワンダーとは、ずいぶん違うなーって思っていましたが、その人物がマーティン・ルーサー・キング牧師だと知らずにずっとそのポートレートを壁に貼っていたんです。(笑)子供の頃から、そういうものに興味があったんですよね。それが何かのタームでちょうど自分の子供が生まれたってこともあって、自分が生まれた年にも興味が湧いて、いろんなことが一つになって音楽で表現出来ないかって思ってたんです。
Q)今回、楽曲を制作する際にどのような機材又は、制作環境で作業を行ったのですか?
今までは、たくさんの音を使える可能性があるということを有益に捉えて音楽をつくってきたんです。コンピュータのプログラミングの音も含めて。でも今回は、ポイントを一つ濃密にするために人が聴いたときに"新しい"と感じる音を捨てたんです。例えばドラムマシーンも含めた普通のドラムの音、ギター、エレクトリックピアノ、ピアノ、オルガン、パーカッションあとはストリングスなど管楽器など、ようするに誰もが知っている音と人の声だけで制作したんです。何故かというと新しいモノっていずれ古くなるじゃないですか?だったら音色として新しい要素がなくてもよければ古くならないって思って。もちろんスタイルは古くなりますけどね。だから「この音は何ですか?聴いたことがないし新しい!」って言われていたことをやめたんです。だから楽器に関してはほとんど生のモノを使いました。編集用にコンピューターを使用したぐらいです。でも打ち込んだトラックに生楽器を乗せただけだと有機的に絡まないんですよ。それを回避するためにスケールに対して違うスケールで楽曲を作ったり。テンポを計算してそのまま弾いてもナチュラルな音だったら2つ上のテンポにしたキーで録音する。その時に一音をコードの中のテンションとして凄くブルージーにしたい。そしたらそれ用に違うキーを設定して、それを二つ落として違うキーに最終的にあてはめる。そうするとわざと不安定な状況で演奏したような仕上がりになるんです。だからこのトラックでこの上に演奏した人って一曲位しかないんです。実は、このアルバム用として3倍のトラックがあるんです。そういう意味では、もの凄くテクノロジーを使ってますね。普通のミュージシャンが絶対にやってない方法でね。だから実際演奏したように聴こえるんだけど、これってどうやって弾いたんだろう?って他のミュージシャンは思いますね。弾いているというか、この音ギターにないけどどうやってるの?ってね。ギターの一番低い音より低くなっている音だったり、この音からこの音に飛べないとか質感も含めてですけど。生楽器を使っているのにテクノロジーがなかったら出来なかったのが、このアルバムかもしれませんね。ギクシャクした楽器と楽器の関係性って必要だと思うんですけど、日本人って自分も含めて少し苦手なんですよね。日本人はナチュラルに美しくキレイにまとめあげるってことに長けている人種で乱暴な感じに弱いと思うんです。いかに音と音のぶつかりあいを乱暴にするかを考えた方法論がこのテクニックだったんですよ。
Q)op.disc 3rdコンピレーションアルバム「Hub opus tokyo」についてお聞きします。RADIQ、GADARI、そして田中フミヤ氏とのプロジェクトDARTRIIXと3名義で参加されていますが、それぞれの楽曲についてお聞かせ下さい。![]()
RADIQ「FAT BACK FUNK」 に関しては、わりと有機的な方法論をどれだけグルーブの中に持っていけるかってことをメインに考えてつくりましたね。もちろんテクノロジーなしには、成立しないんですがより肉体的な感覚をフロントに持っていきました。GADARI「GRAMMAIRE」は、メカニカルなテクスチャーをつかってサウンドスケープをつくるっていうテクノロジーがわりと全面に出ている感じ。DARTRIIX「When is the new〜」に関しては、田中フミヤとお互いのイマジネーションの一致とすれ違いでドンドン面白くなっていった感じですね。
Q)「Hub opus tokyo」やそのレーベルショーケースに出演されるop.discがフォローアップする日本人のアーティストについてどう思われていますか?
今年は、op.discにとって節目の年というかリスタートをかけた年だったんです。とくに初期から関係してくれたアーティストや僕たちが応援したいアーティストに声を掛けて今回の「Hub opus tokyo」が完成しました。「参加してくれた全てのアーティストが一同に集う、そんな夜があったら良いよね」って想いで、レーベルショーケース(8/14 op.disc showcase hub@ LIQUIDROOMが)企画されたんです。
今、いろんなメディアによって情報の選択肢が凄く多いじゃないですか?
だからリスナーが一つのものをチョイスすることが複雑で、アーティストサイドは制作した音が良いカタチでリスナーへ届けることが凄く難しいんですよね。届ける方法はある、だけどちゃんと届いてない。結局は、今後自分たちが日本でこの音楽を絶やさず続けていくためには、自分たちが良ければ良いって考え方ではもの凄く短いタームでの話になってしまう。(田中)フミヤクンともよく話すんですけど田中フミヤ、半野喜弘、吉田タロウの3人でレーベルを立ち上げたけど、結局「田中フミヤ」ではなく、レーベルの顔になっていくのがどんどん若い世代のアーティストになっていって、僕たちがいなくても何の問題もないっていうのが本当のレーベルの理想形なんです。僕らのすぐ下の世代ではAOKI takamasaが頑張っていて、さらに下の世代ではDICHやAkiko Kiyamaが頑張っている。さらにその下も出てくるような、ちゃんとその世代ごとの層になったところでの強さがないとね。そういう力がある若手アーティストってたくさんいると思うんですよ。
Q)これだけたくさんの日本人のミニマルアーティストが存在するのですから、そのミニマルシーンをこういったインタビューやメディアを通じて伝えて行きたいと思うのですがいかがでしょうか?
まさしくそうだと思います。日本って音楽をファッションを通じてトップダウンする方法論が昔からありますよね。音楽をファッションにしてパブリックに落としてしまえといったような。そうじゃなくて、もっとストレートに音楽として浸透していく文化が出来て欲しい。ファッションは、流行によってスタイルがダメになったりするじゃないですか。物事ってそういうことじゃないと思うんですよね。流行じゃなくなってしまったモノがダメじゃないのにダメにしてしまうようなメディアのやり方がおかしいと思う。良くも悪くもちょっとした嘘をいれる、それが足かせになっているようなね。
Q)ジャケットアートワークなどデザインのことについてお聞かせ下さい。
ジャケットアートワークについては、いつもデザインをお願いしている水谷君(*)にRADIQの有機的な色合いやテクスチャーを持ちつつ、それがどれだけフューチャリスティックになるだろうかって常にオファーしているんですね。海外では、RADIQのジャケットが凄いとよく言われます、ドイツとかでね(笑)デザイン力も素晴らしいですが彼が凄いのは、本当に音楽が好きでその世界を表そうとしているから、そこに魂が宿る。そこが凄く良くてデザインをデザインするのではなく、音楽をデザインするって気持ちで制作している。「PEOPLE」に関しては、細かいものがジャングルの食物連鎖のように有機的に絡まっている。70年代のようにグチャグチャしていなくて21世紀に生きている僕たちなりの洗練された感覚と有機的なジャングルみたいな交わりをデザイン出来ないかって思って。コンピュータでピクセルごとにデザインしていると思うから、たぶんもの凄い時間かかっているでしょうね。(笑)「Hub opus tokyo」のアートワークに関しては、また全然違っていてタロウ君(*)っていうコンセプチャルアート的な全てに意味を持たせるタイプのデザイナーが手掛けているんです。若手のトラックが持つ清涼感を表現しているような、黒より白って気がしますね。直線よりか曲線みたいなね。フミヤクンとかもみんなデザイン凄く好きやからつくるんやったらって、いつもデザインする人は、大変だと思う。「違う」とか言われて、「何が違う?」てね。(笑)デザインも音楽もファッションも深く結びついていると思うんですよね。その時代が持つエネルギーとか時代が求めているモノを一番敏感にダイレクトに発信するのって音楽とファッションだと思うんです。一番良いカタチは、こういう音楽を好きな人がこういうファッションに惹かれるといったようなことがあるし、同じ何かを求めているっていうのがあると思うんです。時代の中で移り変わっていくのも似ていますよね。最終的には、その洋服を着たらその音楽を聴いたからどんな気分になったかといったことがその時代をつくって行くんだと思うんです。
*Masakatsu Mizutani「PEOPLE」デザイナー
*Taro Shinozuka「Hub opus Tokyo」デザイナー
Q)パリでは、どのような活動をしてらっしゃるのですか?どのような経緯でパリへ行かれたのですか?日本との違いなどもお聞かせ下さい。
8年前からパリに住んでいますが、単純にヨーロッパでやってみたかったんです。いろんな言語の混じったところ、いろんなものがあるところでモノの見かたも変わるんじゃないかと思いました。直接音楽のスタイルがどうってことよりかは、音楽に対する自分の価値とか音楽をどういう側面から見ているのか?ってことですね。向こうでは、主にヨーロッパ各地でのLiveや発想面での制作をしています。東京とかって人や情報が多いじゃないですか?それに比べてモノをつくるときは、そういうのが少ない方がやりやすいっていうのもありますね。ヨーロッパは、国と国との距離も近いし2時間あれば隣の国へ行けちゃうし、何処に住んでいるってことは差ほど問題にならないです。僕は、いろんな国のミュージシャンと今までセッションしてきましたが現段階では日本人とやるのが一番上手くいく!第一言語が使えることで自分が伝えたいことが最後の10%まで伝わるんですよね。ヨーロッパには、技術の高いミュージシャンがたくさんいるんですけど必ずしも自分が目指した音楽が実現できるわけではないんですよ。
Q)お気に入りのアーティストを教えてください。またどんなアーティストに影響を受けましたか?
山ほどいるんで語り尽くせないんですけど、スライ&ファミリーストーンはどうしてあんな風に不安定な音なのに肉体的で強度があるんだろうってずっと疑問でした。いろいろ調べていく中で、ボーカルのスライがドラッグで動けなくて、やむを得ず泊っていた部屋にトランシーバーを設置してベッドの中で録音したという音にその経緯も知らずに僕は、何十年間も憧れていたんですよ。その一件もあってテクノロジーが進化したことで自分の野生の感みたいなものが鈍っているんだなと思ったんですね。ここ10年間の音楽は、削って削って音質を良いものを作るのが重用しされてたじゃないですか?そうじゃなくて必要な気配をどういう風に設計していくか?というのが僕の次の課題なんです。まあそんなことを感じさせてくれたスライだとか70年代のマイルス・デイビスやボーカリストでいえばカーティス・メイフィールドが凄い好きですね。あと何故か最近は、マーヴィン・ゲイばかりをひたすら聴いていましたね。それと同時にクラシックも聴きます。グルーブのあるものを聴いてミニマルも聴く。
Q)日本人のアーティストとして海外で活躍されていて感じたことなどありましたら教えていただけますか?
けして日本以外のアーティストが日本人のアーティストを認めていないとは思わないです。言語の問題とか肌の色の問題とか未だにハンディキャップがあることも事実ですが、DJもアーティストも音だけじゃないモノって必ず付随しますよね。僕たちはアートだと思ってやっているその反面、自分自身もその中で売るってことが必要だと思ってます。より一般層のリスナーになんらかのコンタクトをとって好きになってもらおうと考えた時に日本人が外国人にというのは、外国人が外国人に対して行うパフォーマンスよりどうしても劣ってしまいます。だからけして不可能ではないことなんだけど、簡単だとは言えないってことなんですよね。「だから僕たちは、それを超えられる位、より音楽の強度を上げていかなければならない、甘えていたら勝てないんです。自分を貫いていくために全部の面で強度を上げる!それは、音楽的にもそうで気に入って貰えなかったら次がないですからね。」フミヤくんなんかは横でDJをやっているのを観るかぎり海外において彼は、それを一つ一つクリアしていってますね。それは、人間的なことも含めてオーガナイザーや一緒にプレイするDJ、みんなに音も良いし、人も良いし、考え方も素晴らしいって思ってもらってまた次がある。その雰囲気がオーディエンスにも伝わって「コイツいいよね!」っていう気持ちになると思うんです。みんなに認めてもらうためには、そういったことをクリアしていかないといけない。海外って簡単に言うけどやっぱり厳しいですよ。アウェイな時の厳しさってもう折れそうになるよー。(笑)
Q)ヴァイナル、CDの衰退、デジタル化についてどう思われていますか?
またこれから先、音楽を聞くフォーマットはどのような形になると思いますか?
基本的には、凄く悲しいところがあります。配信がどうのこうのではなくてリスナーが音楽に対する興味を失っているって凄く感じるんですね。いろんなものが溢れて、情報のアウトプットも溢れ、音楽も溢れた。対価を払って音楽を自分のモノにする感覚が希薄になってきて、価値がないってことをリスナーがうっすらと感じている。最終的には、音楽を制作していくことが出来なくなるってことが一番心配なことですね。だから配信でもその中で一生懸命、曲を捜して買っているリスナーは、音楽に興味のある人たちじゃないですか!だからそれは、全然問題じゃない。自分の価値をプロモートするためのフリーダウンロードやミックスを広めていることが結果的に音楽の価値を下げていると思うんです。自分たちのレーベルを運営していく中で自分たちの楽曲やアーティストの楽曲を、どうキープしていくかってことがレーベルとして今一番の課題ですね。Liveやフェスは、その場を楽しむってことの価値が下がってないけど、ようするに音楽を買うって行為の価値が下がってしまっているんですよね。
Q)日本に滞在中のスケジュールは?
一カ月半ほど滞在しているんですが、8/14のレーベルショーケースでの7人編成Liveを皮切りに3〜4カ所でLiveをします。パリから家族も来るんで子供と一緒にオフを過ごしたり、台湾に映画の打ち合わせに行くかもしれないですね。
Q)今後の活動予定を教えて下さい。
まだいろいろ考えているところですが10月後半には、バンド形態でのツアーも考えています。
フミヤクンとは、DARTRIIXの活動をしたいと話していますしGADARIのアルバム制作も出来たらなって予定しています。まだ確実ではないのですがフランスでオーディオヴィジュアルのシアターピースをやろうと思っていてビジュアル作品とストリングスカルテットとちょっとした室内アンサンブルとコンピュータをつかった40〜60分のピースをオペラハウスでやる予定です。今まで音楽ばかりやっていたけどこれからは、自分たちで映画制作をすることも将来的に考えているんです。音楽も映画と同じように頭から聴いて、終わった時に一つ自分の中に感じるものがある。脚本はもう書き終わっているので来年、制作に入れたら良いんですけどね!まだ今の段階では、夢やけどやりたいね。
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